僕の名前は村上健太。
2982年生まれの29歳。
これは僕が23歳で株式家庭に入ってから
今に至るまでの話だ。

昔の人は「株式会社」なんてものを作ってみんなで生産活動していたらしい。
1人や2人じゃ本格的な生産活動なんてできなかったんだ。

だけど、今ではあらゆるコストが削減されて
その気にさえなれば
どんな生産活動もできる。

食べるものはもちろん、服だろうが家だろうが、
コンピュータの指示に従えば
どんなものでも簡単に出来上がってしまう。

株式会社なんてものはもう必要ないんだ。

一方で、「円満な家庭を作ること」というのは
どれだけ技術が進歩しても難しい。
いや、むしろ技術が進歩すればするほど難しくなっている気がする。

2602年。
「最高に円満な家庭を作りたい」と思うオランダ人達がお金を出し合い、
そのお金で「東インド家庭」というものを設立した。
これが世界初の「株式家庭」というものだ。

これが大成功して
株式家庭が次々と出現した。
未だに普通の家庭もあるけど、
ほとんどの家庭が株式方式をとっている。

完全にピラミッド型になっていて
家庭員は家庭部長に従い、
家庭部長は家庭長に従う。
家庭長は株主に従うといった感じだ。

今ではほとんどの学生が
何の迷いもなく株式家庭に就家する。

僕もその中の1人だ。



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